個別株分析・第6弾|ソフトバンク(9434)を財務11項目で採点
わが家保有の高配当株を財務11項目で分析するシリーズ第6弾。財務スコア6/11・利回り3.97%は通信3社で最高だが配当性向75.8%・自己資本16.0%・PBR4.02倍。NTT・KDDIとの3社比較と2030年度営業利益1.7兆円のAI戦略まで分析。
わが家が保有する高配当株を、1銘柄ずつ財務11項目で分析していくシリーズ。第6弾はソフトバンク(9434)です。NTT(第2弾)・KDDI(第3弾)に続く通信3社コンプリートの締めくくり。
結果を先に言うと、シリーズで最も点数が低い6/11でした。利回りは通信3社で最高なのに、なぜ点が伸びないのか。「わが家の保有株なのにスコアが伸びなかった銘柄」として、正直に書きます。
本記事は、運営者個人が公開情報をもとに行った分析・感想を共有するものです。特定の銘柄の購入・売却を勧めるもの(投資助言)ではなく、その正確性・完全性や将来の運用成果を保証するものでもありません。記載の株価・指標・配当はすべて執筆時点のもので、その後変動します。投資による損益はすべてご自身に帰属します。投資の最終判断は、必ずご自身の責任で、必要に応じて証券会社・IFA・FP等の専門家にご相談のうえ行ってください。
結論:わが家の分析カード(財務スコア6/11)
株価221.6円(2026年7月24日終値・PER18.9倍)での、わが家の分析です。通信インフラ業の設備投資特性(自己資本が低くなりやすい点)を考慮して採点しました。
ひとことでまとめると、「利回りは業界最高。ただし"守り"が最も弱い高配当株」です。
どんな会社?(1分でわかる事業内容)
ソフトバンクは国内携帯3社の一角。通信を土台に、PayPay等の金融・決済、法人DX、AI・データセンターへと事業を広げています。
売上は10年で3.4兆円→7.0兆円と2倍超に拡大。営業利益率14.8%・ROE18.6%と収益性は高く、純利益も10年連続で赤字がありません。
一方、その成長投資とM&Aを借入で賄ってきたため、自己資本比率は16%と薄く、配当性向も75%台で高止まりしています。この「攻めの財務」が、今回の採点結果に直結しました。
11項目の採点結果
緑=合格、青=注意(5点満点)。通信インフラ業の業界特性を考慮して採点しています。
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ①配当利回り | 4/5 | 3.97%・通信3社で最高(NTT3.6%/KDDI2.9%) |
| ②1株配当(維持) | 3/5(注意) | 減配なしだが5年以上8.6円で横ばい・増配余地が乏しい |
| ③配当性向 | 2/5(注意) | 75.8%・要注意ライン70%を全期間で超過 |
| ④営業CF | 5/5 | 1兆3,937億円・10年連続黒字で増加基調 |
| ⑤EPS(1株益) | 4/5 | 9.74円→11.55円。18年・24年に一時減益 |
| ⑥売上高 | 5/5 | 3.4兆→7.0兆円と10年で2倍超・連続増収 |
| ⑦自己資本比率 | 2/5(注意) | 16.0%・通信3社で最低(NTT20.8%/KDDI26.6%) |
| ⑧PER(割安度) | 2/5(注意) | 18.9倍・15倍超で割高圏 |
| ⑨PBR(割安度) | 1/5(注意) | 4.02倍・通信3社で突出して高い |
| ⑩営業利益率 | 4/5 | 14.8%・高水準だが19%台から低下傾向 |
| ⑪現金等 | 4/5 | 1兆4,387億円と潤沢(23年2.1兆からは減少) |
合格は6項目。落ちたのは②増配余地・③配当性向・⑦自己資本・⑧PER・⑨PBRの5つで、きれいに「還元の余力」と「株価の安さ」に集中しています。稼ぐ力(④⑤⑥⑩)は全部合格なのに、です。
株主還元の強化分析(11項目に加えた4視点)
「減配しない会社か」を見抜く、配当の“質”をはかる4つの視点です。
| 視点 | 評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 配当方針 | 維持型 | 実質据え置き。減配しない姿勢は明確だが、性向75%超で増配の原資が乏しい。利益成長がないと配当も伸びない |
| 連続増配・減配歴 | 減配なし | 2018年上場以降、一度も減配なし。ただし21年以降8.6円前後で横ばいが続く |
| 総還元性向 | 配当中心 | 還元はほぼ配当のみ。性向が高く自社株買いの余力は限定的 |
| ROE(資本効率) | 高水準 | 18.6%で通信3社最高(NTT10.1%/KDDI13.9%)。ただし自己資本が薄いことの裏返しでもある |
ここで浮かび上がるのが、この銘柄の本質です。「減配はしないが、増配もしない」——高配当株を「増配で育てる」つもりで買うと、期待が外れるタイプだということです。
業界動向:3社とも財務が薄いのは「業種の特性」
通信3社を並べて気づいたのは、自己資本比率が全社40%未満だという事実です(NTT20.8%・KDDI26.6%・ソフトバンク16.0%)。基地局や回線への設備投資が重く、借入に頼らざるを得ないという業種そのものの特性です。
その代わり、インフラを寡占しているのでROEと利益率は高く、配当も安定します。人気があるぶん株価も買われ、PBRは3社とも1倍超で「割安狙い」はしにくい業種です。
では3社の差はどこに出るのか。答えは配当性向でした。
- NTT・KDDIは45%前後——利益の半分以下しか配当に回さず、増配余力を残している
- ソフトバンクは75%超——利益の4分の3を配当に回し、余力を使い切っている
この違いが「利回りは最高だが増配は期待しにくい」という性格を生んでいます。国内通信は人口減と料金競争で成熟しているため、3社とも成長の柱を非通信(金融・データセンター・AI)に移していますが、ソフトバンクはその振り切りが最も大きいのも特徴です。
通信3社を並べて比べてみた
シリーズで3社すべてを分析したので、同じ11項目で並べます。
| 項目 | NTT(9432) | KDDI(9433) | ソフトバンク(9434) |
|---|---|---|---|
| 財務スコア | 9/11 | 8/11 | 6/11 |
| 配当利回り | 3.6% | 2.9% | 3.97%(最高) |
| 配当性向 | 45%前後 | 45%前後 | 75.8%(突出) |
| 自己資本比率 | 20.8% | 26.6% | 16.0%(最低) |
| ROE | 10.1% | 13.9% | 18.6%(最高) |
| PBR | 1.21倍 | 2.0倍 | 4.02倍(最も割高) |
| ひとことで言うと | 割安な安定株 | 減配リスク最小の増配株 | 利回り最高・守りが最も弱い |
「どれが一番いいか」ではなく、何を優先するかで選ぶ銘柄が変わるのがよく分かります。今すぐの利回りならソフトバンク、増配と減配しにくさならKDDI、割安さならNTT——という整理です。
将来の動向:2030年度に営業利益1.7兆円を目指す「AI企業への変身」
2026年5月、ソフトバンクは新しい中期経営計画を発表しました。掲げたのは「Activate AI for Society」。「通信会社からAIの社会インフラ企業になる」という宣言です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2030年度の目標 | 連結営業利益1.7兆円(2026年3月期は1兆426億円) |
| 同・純利益 | 7,000億円(2026年3月期は5,508億円) |
| 戦略投資 | 2026〜2028年度の3年間で1兆円 |
| 投資先 | 堺・苫小牧のAIデータセンター、革新型バッテリー製造ラインなど |
| 金融事業 | PayPayの米国上場を機に、決済・クレジットの収益拡大へ |
会社側は「AI投資は種まきから収穫フェーズに入る」と説明しています。大阪・堺のデータセンターでは110エクサFLOPS規模のAI計算基盤を収容する計画で、国内最大級の規模です。
この計画を、投資家として冷静に見るとどうか
営業利益1兆円→1.7兆円は約1.6倍という野心的な目標です。わが家は次の3点をセットで見ています。
- 3年で1兆円は、自己資本16%の会社が背負う額として重い。借入や社債でまかなう部分が増えれば、金利上昇局面では利払いが利益を削ります
- AIデータセンターは競争領域。NTT・KDDIも同じ分野に投資しており、「投資すれば必ず儲かる」わけではありません
- 投資期は増配余地をさらに狭める。既に配当性向75.8%なので、成長投資と増配の両立は簡単ではありません
逆に言えば、この計画が実現して利益が1.6倍になれば、高い配当性向のままでも増配できる余地が生まれます。5年以上横ばいの配当が動き出すかは、この投資の成否次第——つまり今のソフトバンクは、「高配当株」でありながら「AI投資の成否に賭ける成長株」の顔も持ち始めていると言えます。
ここが強い(保有している理由)
利回り3.97%は通信3社で最高。NTT3.6%・KDDI2.9%と比べて明確に高く、インカム狙いの主力になります。
稼ぐ力は本当に強いのもポイントです。売上は10年で3.4兆→7.0兆円と2倍超、営業CFは1兆3,937億円で10年連続黒字、営業利益率14.8%、ROE18.6%は通信3社最高。11項目のうち「稼ぐ力」に関わる4項目(営業CF・EPS・売上・利益率)はすべて合格しています。
PayPay・法人DX・AIといった非通信を持っていることも、他2社にはない特徴です。
ここに注意(正直に言うと、弱点は多い)
①配当性向75.8%——利益の4分の3を配当に回しており、業績が少し悪化すれば減配圧力がかかります。NTT・KDDIの45%前後と比べると、余裕の差は明確です。
②自己資本比率16.0%——通信3社で最低。借入依存が高く、金利上昇局面では利払い負担が重くなりやすいのが最大のリスクです。
③PBR4.02倍——3社で突出して高く、下落局面でのクッションが小さい水準です。積水ハウス(1.04倍)や全国保証(1.67倍)と比べると、株価の割安妙味はありません。
④配当が5年以上横ばい——2021年以降8.6円前後で、27年3月期予想も8.8円。「減配しないが増配もしない」状態が続いています。
加えて、ROE18.6%という高さも自己資本が薄いことの裏返しという側面があります。営業利益率も19%台から14.8%へ低下傾向。数字だけを見て「効率が良い会社」と単純に評価できない点は、正直に押さえておきたいところです。
それでも配当は続くのか?(一番気になるところ)
高配当株として持つなら、結局ここが最重要です。わが家の見方はこうです。
減配の可能性は「低いが、ゼロではない」と考えています。
- 減配しにくい理由:通信料金という毎月入るストック収益が土台。営業CFは1.4兆円規模で10年連続黒字。上場以来「高配当」を看板にしてきた会社なので、減配は経営として避けたい選択肢
- それでも注意が必要な理由:配当性向75.8%は「利益が減ったら即座に苦しくなる」水準。KDDI・NTTの45%前後のような余裕はない
つまり「業績が横ばいなら配当は維持されるが、利益が大きく減ると真っ先に苦しくなるタイプ」。KDDIのような「多少利益が落ちても増配を続ける余裕」は期待しにくい、と理解しておくのが安全だと考えています。
わが家の付き合い方(反省も含めて)
わが家はソフトバンクを370株保有しています。ただ正直に言うと、これは今の8項目スクリーニング基準を確立する前に買った銘柄です。自己資本比率40%以上・配当性向30〜70%という今の基準に当てはめれば、新規では買わない判断になります。
では売るのかというと、そうもしていません。利回り3.97%は通信3社で最高で、通信インフラという事業の安定性もあります。「今のルールでは買わないが、持っている分は配当をもらいながら様子を見る」——これが正直なところです。
投資を続けていると、こういう「昔の自分の判断」と付き合う場面が必ず出てきます。全部を今の基準で切り捨てる必要はないけれど、買い増しはしないという線引きだけは、はっきりさせています。
まとめ
- 財務11項目中6項目が合格。シリーズで最も点数が低い銘柄になった
- 利回り3.97%は通信3社で最高・売上10年で2倍超・営業CF1.4兆円と稼ぐ力は強い
- 落ちたのは配当性向75.8%・自己資本16.0%・PBR4.02倍など「還元の余力」と「株価の安さ」
- 配当は5年以上8.6円で横ばい。「今の配当をもらう」設計で、「増配で育てる」タイプではない
- 2030年度に営業利益1.7兆円を目指し3年で1兆円をAIに投資。配当が動くかはこの成否次第
通信3社の分析はこれで完了です。あわせて第2弾・NTT(9432)、第3弾・KDDI(9433)もご覧ください。高配当株の選び方は「わが家の11項目チェックリスト(保存版)」で解説しています。
※本記事は2026年7月時点の公開情報に基づく個人の分析であり、特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。株価・PER・PBR・利回りは2026年7月24日終値時点、業績は2026年3月期実績・2027年3月期会社予想ベースです。配当は2027年3月期会社予想(8.80円)、配当性向は1株配当÷EPSで算出。配当額は2024年10月の1→10株式分割を調整して表示しています。投資判断はご自身の責任で行ってください。必要に応じてIFA・FP等の専門家にご相談ください。
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