住宅ローンの繰り上げ返済 vs NISA投資:どちらを優先すべきか

余剰資金の使い道として、住宅ローンの繰り上げ返済とNISA投資のどちらが有利か。金利水準・税制・リスク許容度の3軸で比較します。
毎月の余剰資金、繰り上げ返済とNISAどっちが正解?
給料日後、家計を整理すると毎月3〜5万円の余剰資金が残る。「この余剰、繰り上げ返済に回すべきか、それともNISAに入れるべきか」――住宅ローンを抱える家庭で必ず出てくる悩みです。
- 余剰資金を毎月どちらに回すか、決めきれずに普通預金に置いたまま
- ネットで調べると「NISA優先派」と「繰り上げ優先派」で真逆の意見
- シミュレーションを試したが、数字を見るほど迷いが深まる
- 家族の意見が割れて、いつまでも結論が出ない
「金利1%なら投資した方が得」――この説明はネットでよく見ますが、実際に判断する時に必要なのは数字だけではありません。金利・時間軸・心理的負荷の3つを揃えて見て、はじめて自分の答えが出ます。
私も何度もシミュレーションしました
私は2026年3月に住宅ローンを完済しました。完済する前の数年間、毎月この問いと向き合っていました。
当時の私の状況はこんな感じです。
NISAも毎月続けながら、それでも余剰が出る月にはエクセルで何度もシミュレーションしました。「年5%で20年回せば+500万円。繰り上げで浮く利息は150万円。投資の方が350万円得」――数字だけ見ればNISAの圧勝です。
でも、その数字を見ても私の中で迷いが消えませんでした。理由は2つあります。
① 投資の「年5%」はあくまで過去の平均で、その通りに進む保証はない
② 毎月の返済を「終わらせたい」という心理的な重さは、数字に出てこない
判断するための3つの軸
シミュレーションを繰り返すうちに、「数字」「時間軸」「心理」の3軸で見ないと答えが出ないと気づきました。
水準
軸
負荷
軸① 金利水準:自分の適用金利が大きな分かれ目
繰り上げ返済の実質リターンは「ローン金利と同じ」です。金利1.0%なら、繰り上げた額の1%分が確実に節約できる。リスクはゼロです。一方、NISAは過去の全世界株式の長期実績で年5〜7%程度(ドル建て)が目安ですが、これは将来を保証する数字ではありません。
- 金利分が確実に節約できる(リスクゼロ)
- 毎月の返済額・期間が減り家計に余裕
- 万一の失業時に家を手放すリスクが下がる
- 精神的な安心感が大きい
- 運用益が非課税(通常は20%課税)
- 長期で複利が効く
- いつでも売却・引き出し可能(流動性あり)
- 短期は元本割れリスクあり
軸② 時間軸:残り年数で意味が変わる
残り20年以上あるなら、複利が効くNISAの優位が大きくなります。逆に残り5年なら、繰り上げで完済を早めた方が「家計の固定費が消える」効果が大きい。
| 積立条件 | 月3万円・20年 | 月5万円・20年 |
|---|---|---|
| 積立元本 | 720万円 | 1,200万円 |
| 年率5%で運用した場合 | 約1,233万円 | 約2,055万円 |
| 元本との差額 | +513万円 | +855万円 |
※ 年率5%は過去の全世界株式の長期実績をもとにした参考値です。将来の運用成果を保証するものではありません。
軸③ 心理的負荷:数字に出ない重さ
これは私が一番悩んだ部分です。「毎月借金を返している」という感覚は、想像以上に重い。完済した今になって振り返ると、ローンが消えた瞬間の安心感は、エクセルの数字には出てこない価値でした。
配偶者が「投資より返済優先」と考えるタイプなら、無理にNISA中心にしても続きません。家族の安心感は数字より大事な場合があります。
【フロー】あなたは繰り上げ返済 vs NISA どっち?
3つの質問に答えるだけで、あなたに合った選択肢が見えてきます。
利息節約の確実リターンが高い
投資リターンが上回りやすい
完済して固定費ゼロへ
複利を最大限に活かせる
繰り上げは年1回程度
安心感も大切にする
残り10年以内 or
返済の重さが気になる
残り20年以上 and
家族全員で納得済み
残り10〜20年 and
迷いがある
金利別・残高別の判断基準
3軸を踏まえて、自分がどう動くべきか整理します。まずは今の適用金利を確認してください。
| あなたのローン金利 | 推奨アクション | 理由 |
|---|---|---|
| 〜0.7%(超低金利変動) | NISA優先 | 期待リターン差が大きく、控除との合わせ技も有効 |
| 0.7〜1.0% | NISA優先 | 期待リターン(年5〜7%)がローン金利を大きく上回る |
| 1.0〜1.5% | 半々(折衷案) | 月1〜2万円ずつ分散。家族の合意も取りやすい |
| 1.5〜2.0% | 繰り上げ寄り | 確実リターンと投資リターンの差が縮まる |
| 2.0%以上(固定など) | 繰り上げ優先 | 確実なリターンが大きく、機会損失が小さい |
控除期間中(最長13年)は残高×0.7%が税額から引かれます。繰り上げ返済で残高を減らすと控除額も減るため、控除期間中はNISA優先が合理的なケースが多いです。
こんな人はどちらを選ぶべきか
金利だけでは決まらない場合、次のチェックリストで自分の傾向を確認してください。
- 変動金利1.0%以下で借りている
- 完済までまだ15年以上ある
- 相場が下がっても積立を続けられる
- 生活防衛資金(6ヶ月分)は確保済み
- 家族もNISAに納得している
- 金利1.5%以上、もしくは固定金利
- 残り返済期間が10年以下
- 含み損が出ると不眠になるタイプ
- 家計の固定費を1日でも早く減らしたい
- 配偶者が投資に強い不安を感じている
対象を絞り込む:この記事が役立つのはこんな人
ここまでの判断基準は、特に次のような方に当てはまります。
- 変動金利0.5〜1.5%で借りている
- 毎月1〜5万円の余剰資金がある
- NISAは始めているが、増額するか繰り上げに回すか迷っている
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)は既に確保している
生活費の最低6ヶ月分(目安100〜200万円)を普通預金に確保するのが先。手元現金がゼロのまま繰り上げもNISAも進めるのは危険です。
今月の余剰、どちらに回すか決めよう
ここまで読んで、自分のケースが見えてきたと思います。最後に、今月のアクションを決めるための3ステップを用意しました。
ネット銀行ならアプリ、メガバンクなら返済予定表を見て、現在の金利を確認します。
返済予定表の最終回までの年数と、現在の残高を確認。控除期間中かどうかもチェック。
上の金利別の表を見ながら、今月の余剰を「NISA増額」「繰り上げ」「半々」のどれに振り分けるか決めて、今日中に手続きまで進めましょう。
私の結論:繰り上げ返済を選び、後悔はない
3軸を散々悩んだ末、私は最終的に繰り上げ返済を選びました。NISAは月10万円・妻は月4万円の積立を続けたまま、追加の余剰は繰り上げに回し、2026年3月に完済しました。
判断の決め手は、軸③の「心理的負荷」でした。妻のリスク許容度がそれほど高くなく、金利上昇傾向も見えていた中で、「ローンを終わらせる」という選択は、家族全員が腹落ちする答えだったからです。
正直に言えば、「もう15年早くNISAを始めていれば」と思うことはあります。でも、完済した今、後悔はありません。毎月の返済通知が来なくなった生活は、想像以上に軽やかです。
- 数字だけでなく、家族全員が腹落ちして続けられる選択をする
- 「正解」は人によって違う。自分の3軸で決めればよい
- NISAも繰り上げも、どちらか一方ではなく並行できるのがベスト
- 生活防衛資金を確保した上で、無理なく続けられるプランを選ぶ
どちらが正解かは、人によって変わります。この記事の3軸と判断表が、あなたの「今月の一手」を決める手がかりになれば幸いです。
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